第74回 松山市立拓南中学校 卒業式②
2021年3月18日 15時56分昨日、紹介できなかった「送ることば」「旅立ちのことば」を紹介します。
【送ることば】
冬の寒さが和らぎ、陽の光やそよ吹く風の温かさに、春の訪れを感じる季節となりました。この春の佳き日に、拓南中学校を卒業される七十四期生の皆さま、ご卒業おめでとうございます。
期待と緊張を胸に、拓南中学校の門をくぐってから三年。瞬く間に月日は流れ、今、旅立ちの時を迎えようとされています。こうして先輩方の姿を目にしていると、数々の思い出が、あふれんばかりに浮かんできます。
先輩方は、上級生として、学校の最高学年として、常に私たちをリードし、生徒会活動、部活動、学校行事を盛り上げてくださいました。
生徒会活動では、いつも先を見通し、私たちが気付けないようなところにも細やかに気を配り、実行されました。全校生徒を前にして積極的に行動する姿は頼もしく、同じ生徒会役員として、先輩方のそばで学べたことを、私は誇りに思います。
部活動では、どんなに困難な時でも決して逃げ出さず、心と技を磨き続けました。私たちが失敗したときは、自分の時間を割いて、何度も丁寧に教え、励ましてくださった先輩方。今、感謝の気持ちでいっぱいです。
今年は、新型コロナウイルス感染症という、予期せぬ災難が、私たちの学校生活に、大きな影を落としました。命を守るため、様々な活動が制限されました。
けれども、演目の削減や時間の短縮を余儀なくされた、体育大会や文化祭は、そんなことを微塵も感じさせず、例年に勝るとも劣らない、活気と熱意あふれる、最高の学校行事になりました。
仲間と心を一つにして、競技に燃えた体育大会。そして、完成度の高いステージパフォーマンスで、私たちを魅了した文化祭。先輩方が三年間磨き上げた歌声は、美しいハーモニーで、私たちの心を震えさせ、今もなお心に響き続けています。
この三年間で、先輩方は何を学び、何を思い、何をその手につかまれたのでしょうか。ひとりひとりの経験は違っても、それが、これから社会に向けて羽ばたくための、大きな力となることは、間違いありません。
私たちは、先輩方が集団として動かれるときの、凛としたたたずまいが好きです。正義と、品格と、思いやりの心を重んじる姿勢が好きです。挑戦する心とおおらかさが好きです。そして、真摯に学問と向き合い、学び続けた先輩方を、心から尊敬しています。
先輩方が築き上げられた良き伝統を受け継ぎ、一年後には、先輩方のように誇らしい卒業式を迎えることができるよう、精進していきますので、どうぞ見守っていてください。
名残は尽きませんが、お別れの時が近づいてきました。最後になりましたが、皆さまのご健康とさらなるご活躍を心よりお祈り申し上げ、送る言葉といたします。
【旅立ちのことば】
大地の鼓動と生命の息吹を感じる季節となりました。私たちの門出に、皆様から心のこもったお言葉をいただき、言葉で言い尽くせない感謝の気持ちと、次々によみがえってくる三年間の思い出で、今、胸がいっぱいです。
三年前、満開の桜の下、大きめの真新しい制服に身を包み、この拓南中学校の門をくぐりました。これから始まる中学校生活に不安と期待で、立つ足が小さく震えた入学式。あの時から流れた月日はたった三年間でしたが、思い出のぎっしり詰まった三年間でした。
たくさんの「はじめて」と「成長」があった一年生の大洲宿泊研修。びしょ濡れの友達と笑い合ったカヌー。おしゃべりが弾んでまだ眠りたくなかった夜。仲間と協力してゴールを目指したウォークラリー。あの二日間で私たちに絆が生まれました。
初めて後輩ができた二年生。いろんなことに思いっきり挑戦した一年でした。
中でも少年の日の記念行事は、身近な方々への感謝を感じるきっかけとなりました。みんなで歌った『Let’s search for Tomorrow』。歌声にのせた未来への希望は、今も私たちの胸で輝いています。たくさんの方々に支えられて実現できたステップアップウォーキング。三十キロの長い道のり、疲れと共にだんだん無口になっていったけれど、友と励まし合って、重い足を引きずりながら皆でゴール。到着後に食べたおうどんの味は最高で、心までポカポカに温まりました。
二年生を終える直前、誰も予期していなかった臨時休業が始まりました。休業期間、友達に会えること、授業を受けられること、部活動に取り組めること、そんな日常の当たり前のありがたさを実感しました。
そして五月。みんなに会える嬉しさと、勉強への一抹の不安を胸に、私たちの最後の年がスタートしました。
体育大会。クラス一丸となって、頑張った学年種目。転んでつくった膝の傷。上手く足が合わず時には喧嘩もしたけれど、仲間を信じて枯れるまで声を出して深まったクラスの絆。最後はしっかり心のたすきを繋ぎました。
そして合唱コンクール。限られた時間の中、必死で練習しました。本気だからこそ、時には意見がぶつかり合いました。でも、皆で悩みながら練習を重ねて、クラスの心が一つになり、全員の歌声が綺麗に重なり教室に響き渡った瞬間はどれほど感動したでしょう。本番では最高の歌声が体育館に響き渡りました。今年も最後に、七十四期生みんなで歌いたかった。だけど、合唱することが叶わなくても私たちの心はいつも繋がっていました。
十一月。延期されていて待ちに待った修学旅行。行く前からわくわくが止まりませんでした。美術館で圧倒された壁画『最後の晩餐』。竜馬と眺めた広大な太平洋。金毘羅山の頂上で買ったお守り。友と語り合った夜。終わってほしくなかった三日間。たくさんの方々に支えられたこの修学旅行は忘れられない大切な思い出です。
三年間やり抜いた部活動。炎天下も、手がかじかむ木枯らしの中も、必死でボールを追いかけたコート。仲間とおそろいのユニフォーム。不安で寝付けなかった試合前日。最後、総体という舞台に立つことはできなかったけれど、部活の仲間と共に過ごした時間は何ものにも代えられません。休日返上でたくさんのアドバイスをくださった顧問の先生、いつも応援してくれた家族は、私たちの一番のサポーターでした。三年間の部活動は、私を大きく成長させてくれました。
この三年間、私たちは多くの方に支えられてきました。
先生方。先生方には本当に多くのことを教えていただきました。分かるまで根気よく教えてくださったり、親身に相談に乗ってくださったり、一緒に泣いてくださったり…。思春期で、時には反発する私たちを、常に愛情を持って導いてくださりありがとうございました。先生方の教えを胸に私たちは明日から自分の足で歩き始めます。
在校生の皆さん。私たちを憧れだと言ってくれてありがとう。いつもついてきてくれてありがとう。今、この拓南中学校の伝統のバトンを皆さんに渡します。皆さんなら、さらに素晴らしい拓南中学校にしてくれると信じています。
いつも私を支えてくれた家族。行き場のない苛立ちをぶつけてしまったこともありました。素直になれないこともありました。それでもそばにいて、励ましてくれて、愛してくれてありがとう。きつい言葉でたくさん傷つけてごめんなさい。まだまだ幼い私たちだけど、これからも見守り続けてください。
そして何より、いつも側にいて一緒に笑ったり泣いたりした七十四期生の仲間たち。悩んでいるときに相談に乗ってくれた友達。誰にも言えなかったことを黙って聞いてくれてありがとう。笑い転げた休み時間。競っておかわりした給食のカレー。部活でへとへとだけど、話が弾んでずっと続いてほしかったオレンジ色の帰り道。
卒業がこんなに淋しいのはきっと明日から皆に会えなくなるから。明日からはそれぞれの道を歩みますが、ずっと仲間です。出会ってくれてありがとう。
いよいよお別れです。
後から後から思いが溢れてきますが、今、きらきら輝く思い出を閉じます。こみ上げる淋しさを勇気に変えて、私たち一一八名はまだ見ぬ大きな世界へ羽ばたきます。
何だか淋しいので、さようならは言いません。
ありがとう、大好きな拓南中学校。
ありがとう、大切な仲間たち。
また いつか この場所で。